高垣楓に憧れていたモデルの話。

5pt   2018-04-16 20:46
SSなび

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/01(金) 01:43:17.57 ID:YGge3a1w0

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 思えば。

 初めて見たあの時から、彼女は私の憧れだった。

 私がまだ、モデルじゃなかった頃のこと。何の気なしに買ってみた雑誌に彼女の姿はあった。

 少し緑がかった髪に、宝石のように綺麗なオッドアイ。そして、何かを憂いているようなその表情……。

 たった一枚の写真なのに、明らかに他の誰とも違う存在感。


 私は、彼女に恋をした。


 すぐに私は彼女のことを調べた。彼女の名前は高垣楓。和歌山県出身で、私より二つ歳上で……そんな、女性で。

 気が付いた時には、私は彼女が載っている雑誌をできる限り集めていた。

 いつか、私も、この人みたいに……!

 そんな気持ちが抑えきれないほどに膨らみきった頃、タイミングを見計らったかのように私はとあるモデル事務所にスカウトされた。

 所属モデルは、と、スカウトマンからサンプル写真を借りて見ていたら……いた。

 そこは、彼女が所属する事務所で……私の返事は決まっていた。

 一緒に仕事をする機会は思っていたよりもずっと早く訪れた。実際に見る彼女は、写真で見るよりもずっと美人で……私は思わず気後れしてしまった。
 言葉を交わしてみたいと、思わなかったわけではない。ただ……彼女はどこか近寄りがたい雰囲気をまとっていて、なかなか話しかけることができなかった。
 私以外の人もそう感じていたのか、高垣さんに話しかけるなんて人はほとんどいなかった。

 でも、それは孤独というわけではなく、むしろ『孤高』という印象で……それがまた一段と彼女のミステリアスな美しさに拍車をかけていた。
 そんな印象を持っていたのは私だけではなかったようで、モデル仲間もこんなことを言っていた。

「高垣さんって、本当に綺麗だよね。いったい、普段は何をしているんだろう……」

「わかる。美人過ぎて、私なんかが近寄っちゃダメって感じ」

「何と言うか……ちょっと、格が違うよね」

 私もそれには同感だった。

 高垣さんは、私たちなんかが触れていい存在じゃない。

 もっと、神聖な……不可侵な存在なんだ、って。

 ――その頃の私は、本気でそんな風に思っていた。

 そして、たぶん……だからこそ。


 彼女は私の前からいなくなったのだ。


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